アイフェイズ・モバイル開発のコンセプト(1)小型軽量そして省エネルギー

  アイフェイズ社の社名の由来は,フェイズ(位相)に着目した装置メーカーという宣言です.
アイの方は,AI(Artificial Intelligence)の意味でしたが,外国人などにはloveの日本語だという説明が最も受けるので,最近はそう言いうことになりまた.サイン形をした温度波を試料に与えて応答をみる熱物性測定装置群を扱っています.温度波を使う装置は余りありませんが,シグナルを小さくできるので小型化の可能性がありました.実験室の熱関係の装置は大きなものがほとんどです.電気テスターのように現場で使えるモノを開発したいというのが起業当時からの目標でした.問題は波を解析するのに必須なロックインアンプの市販品がオーディオアンプのように大きいことでした.

  まず装置の肝であるアンプ系の設計を行い,ついで全体のデザインとなります.2002-3年のころです.当時スーパーファミコンが全盛で,このブラスチックの収まるサイズの装置にしようという目標をたて,その結果がホチキス型の試料部と弁当箱のようなメインコントローラです.あえて一体化しなかったのは,試料部はバリエーションがあるのと,デシケータなどに入れることを想定したためです.厚み計を含めて全てが自社開発・製造で,エレガントなソフトウエア(自負ですが)と相まって,想像以上に小型軽量化が実現できました.

  小型化は,第一に持ち運びに便利,そして置き場所に困らない,納品・修理が宅配で対応できるというほか,装置の消費電極が非常に小さくできます.1型ではUSB給電だけで,熱拡散率測定が出来るという常識を覆す製品になっています.熱拡散率・熱伝導率測定は,省エネルギーを目指した材料開発に重要な役割をはたしていますが,測定装置が省エネルギーでなけらば洒落にならないと考えます.

 
アイフェイズ・モバイル開発のコンセプト(2)迅速測定と少量試料

  測定の面倒なところは,装置の操作が難しい,その上しばらく使っていないと調整も必要な点にあります.さらにサンプリングが煩雑なこと.データが欲しいと思ったら直ぐ欲しいと言うのが研究者というもの.大きな会社では,伝票に記載し,担当へ依頼するなど面倒で時間のかかる手順を踏まないといけない.気の短いひとは数分も待てないものです.

  アイフェイズモバイルは,スイッチオンから,多少ウオームアップはあるとしても,数分でデータ取得できることを目標にしました.特に厳密な場合を除けば,30秒程度までを実現しています.しかもフィルム状なら,サンプリングが要らない.一万円札のどの箇所でも切り出さずに測定できます.もちろん与える温度波は精々1℃ですから,相手にダメージを一切与えません.

  センサーサイズが0.5x0.2mmですから耳かき一杯のサンプルでも多すぎるくらいです.食卓塩一粒でも測定できます.このために 貴重な新規ポリマー(往々にして1mg程度しか得られないものです)の測定ができます.他の物性は全く測れないので,合成の研究者から喜ばれています.

 
アイフェイズ・モバイル開発のコンセプト(3)多機能と多目的

  アイフェイズシステム位相型には,超高感度のモバイルtype1,高感度温度可変型のtype2があり,ともに好評を博し,200台超の出荷を達成しました.この数年のICの進歩,とくにFPGAの高性能化を受け,新たな統合システムとして再出発致しました.1と2を併せて3すなわちM3システムです.従来機との互換性は活かしながら,一台のコントローラーで幾つものプローブ(試料部)を差し替えることで,多機能化をはかっています.現在は従来の1型,2型の後継機種に加え,ゼーベック係数・導電率測定装置,表面型熱拡散率測定装置を新発売致しますが,将来的には,より多機能で高度な熱測定を目指して開発中です.また加重が少ない厚み計としても使われております.

  アイフェイズの装置は小型軽量,迅速測定,経験不要といった使い勝手ばかりでなく,測定自体ももちろん高性能です.センサーとヒータを試料に密着させるため小型化し,堅い平板でも高い再現性が得られること,交流測定でロックイン増幅の積算能によるSN比の向上が達成できるためです.回路は必要最小限で高機能化しノイズに強いかつ省エネルギーマシンとして仕上がっております.

  振幅型のM10は,熱インピーダンス測定装置ですが,被測定物に近い熱伝導率既知の材料と比較することで熱伝導率へ換算できます.測定が非常に簡単なので,発泡材料,ゴムの測定のほか,熱伝導率差によるパッケージ材料,塗膜,多層膜,真空断熱材の表層効果,粉体,液体の測定に,全く新しい評価法としてご利用いただいております.単純な熱伝導率や熱拡散率の計測ばかりでなく現場での品質管理に応用できる装置.測定法です.またこの振幅型も試料が少量なので,温度制御も容易で,現在800℃での測定を可能としたのもの試作中です.

 
アイフェイズ・モバイル開発のコンセプト(4)標準化とデータの解釈

  測定装置は独善ではいけません.標準化が大切です.この温度波法による熱拡散率.熱伝導率測定法は,会社設立以前から東京工業大学が中心になってISOへの提案を1998年から模索してきました.プラスチック分野TC61 SC5への提案を,通産省,日本規格協会,日本化学工業協会,プラスチック工業連盟ほかのご支援を得て,欧米5カ国の賛同のもと2001年に提案いたしました.

  従来法と装置形状が全くことなり,厳しい状況もありましたが,我々がラウンドロビングテスト(測定法間の比較検討)の提案,実施を行った結果,温度波法の優秀性が認知され,2008年まず位相型の熱拡散率測定法が認定され(ISO22007-3),ついで2012年に振幅型の熱伝導率測定法が発行になりました(22007-6).自ら開発した方法をISOへ提案して,日本発として成立させた珍しいケースです.

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